日本語には、基本味の甘味や酸味だけでなく、優しい味やイチゴ味などの味の名称が多数活用されている。自分でも使う人が多いであろう。ところが、味の分野には五基本味だけが味という誤った通説がある。この常識にしたがえば、優しい味やイチゴ味は到底味とはいえない。味は生活に密着した言葉なので、不思議である。
このような不自然さを改善するために、優しい味やイチゴ味も味の一種であると主張し、「味の一覧表」を作成した。ここには、基本味とともに、優しい味やイチゴ味など157種の慣用味名を掲載している。本サイトでも、紹介している21種の味の中に、慣用味名の味を7種含めている。
味の一覧表の作成の目的は、これらの味も基本味と同じように味の一種であることを指摘することであった。ところが、味の一覧表を作成しただけでは、慣用味名が何故味と呼べるのかは理解されないようである。
その後、各種調査を進めるちに「味を表す普通の言葉は味が存在する根拠になる」という見解を持つに至った。そして、この根拠を言語的根拠と呼んだ。従来は、生理学的根拠と物質的根拠だけだったので、言語的根拠は新しい概念である。そこで、味が存在する言語的根拠ついて整理する必要があると考えた。
本欄では、味を表す普通の言葉は、その味が存在する言語的根拠になることを説明する。主な論点は、本欄の7ページの「言語的根拠になる言葉」で展開する。6ページまではその背景となる知識や考え方の整理で、8・9ページはいわば補足である。そして、10ページでは結論的に、慣用味名は味が存在する根拠になることを指摘する。
(2019年12月作成)(2022年1月改訂)