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慣用味名は味が存在することの言語的根拠になる



1.慣用味名と味を表す普通の言葉

 慣用味名は、色の分野で活用されている慣用色名に倣って味に適用した用語である。ただし、慣用味名では慣用色名にはない「味が下に付く用語である」と「定型的な表現といえる」という条件を課しているので、限定的に捉えている。

 慣用味名であることの要件は
    @味が下に付く用語である。
    A官能特性の味を意味している。
    B味の特徴を表現している。
    C定型的な表現といえる。
と規定している。このうち@〜Bは、「味を表す言葉」の項で説明した条件と同じである。Cの「定型的な表現といえる」は「普通の言葉」の条件の「使用頻度が高い」に対応しているが、両者は一致しているとはいえない。そこで、この「定型的な表現でといえる」と「使用頻度がい」の違いを整理しておく。
    
2.定型的な表現と使用頻度の高い言葉
 慣用味名の要件である定型的な表現は、創造的な表現でないことを意味させている。社会には新しい言葉が次々と登場する。そして、その大部分は直ぐ消える。ごく一部が定着するが、定型的な表現はこの定着した言葉を指す。また、定型的な表現の先には、連語・複合語・熟語があり、語と語の繋がり程度を表現している。ただし、熟語と違って、定型的な表現といえるかどうかは、一意には定まらない。そのために、使用頻度で判定している。具体的には、指標として新聞系DBであるの聞蔵Uビジュアルとレシピ系DBであるレシピブログのヒット件数を採用し、慣用味名とみなす判定基準値として、例外もあるが、両方のヒット件数が100以上と設定している。

 一方、言語的根拠の条件である「使用頻度の高いこと」は曖昧さを含むので、その意味する範囲は広い。定型的な表現で設定している条件も、使用頻度の高い言葉の範囲内に含まれることは明らかである。そうすると、味を表す普通の言葉は味が存在する根拠になるという見解が慣用味名にも適用できる。すなわち、慣用味名も味が存在する根拠になる。

3.慣用味名で今後検討するべき条件
 とはいえ、使用頻度の高い言葉の範囲内に含まれていても、慣用味名が必ずしも適切であることを意味するものではない。慣用味名を味が存在する根拠として確立させるためには、定型的な表現で設定した条件が使用頻度の高い言葉に相応しいかを今後とも吟味する必要がある。そのためには、現在157種の慣用味名を提案しているので、これらの慣用味名が味を表す普通の言葉に相応しいかを精査し、その結果を踏まえて「定型的な表現といえる」ための指標に活用しているデータベースの種類とか判定基準値を修正していくことが考えられる。場合によっては「定型的な表現である」の表現も修正する必要があるかもしれない。

(2022年1月作成)