味講座 に戻る 1.疑問 国立国語研究所が運営しているコーパス検索ソフト「中納言」では、醤油味の味に「ミ」を当てている。そうすると、「しょうゆみ」と読むことになる。一般的には「しょうゆあじ」と言っているが、どうなっているのだろう。 2.回答 醤油味は「しょうゆあじ」と発音するのが正しい。 3.解説 醤油味は、醤油自体の味ではない。醤油で味付けされた別の食品(たとえばラーメン)の味である。簡単にいうと、味付けに使用された味である。そして「しょうゆあじ」と発音されている。 味付けに用いられるのは醤油味だけではない。味噌味、イチゴ味、カレー味、抹茶味など実に多くの用語がある。そして、これらの味は全て「あじ」と発音されている。 逆に、日本語研究の総本山である国立国語研究所が、何故このような間違いを犯しているのかが興味深い。多少想像を交えて推察すると、その背景には、甘味などの基本味、古い味語である醍醐味や肉味の存在がある。これらの味は「み」と読まれる。ただし、これらの味語は、うま味(基本味の一つ)を除いて、古い時代に中国から伝来した熟語である。 また、人間味や現実味などの存在もある。これらの味も「み」と読む。ただし、これらの味は、官能特性の味を意味しない。これらの味が当て字とされるのは、当然である。 一方で、醤油味などは20世紀になってから日本で生まれた。いわゆる和製熟語である。その用法も、醍醐味や肉味が醍醐や肉自体の味を意味するのと異なり、醤油味は別の食品(ラーメンなど)の味付けに使用される味を意味する。また、人間味や現実味の味が官能特性の味を意味しないのに対し、醤油味の味は官能特性の味を意味している。 これらの事実が確認できれば、社会的には“あじ”と読まれていることに気付くはずである。次回の修正の機会には見直して欲しい。 (2020年5月作成) |