味講座 に戻る 1.疑問 文化庁が策定している常用漢字表では、味の訓読み「あじ」の例として、塩味を登場させている。塩味の味を「あじ」と読むのであれば、塩味は「しおあじ」と読むはずである。塩味は基本味の一つであるが、この塩味も「しおあじ」と読むのだろうか。 2.回答 基本味の塩味は「えんみ」と音読みするのが正しい。ただし、「しおあじ」と訓読みする塩味も存在する。 3.解説 塩味以外の基本味である甘味・酸味・苦味・うま味では、味を全て「み」と音読みしている。したがって、塩味だけ味を「あじ」と訓読みするのは、不自然である。塩味も「えんみ」と読めるのだから、そう読むのが相応しい。 何か歴史的な事情があるかというとそうでもない。塩味の古い表記である鹹味は、「かんみ」と読まれる。筆者が学生の頃は、鹹味だった。もっと古い時代に遡ると、栄西の「喫茶養生記(1211年)」がある。ここでは、5味として甘味・醎味、酸味、苦味・辛味を挙げている。この醎味も「かんみ」と読まれる。5味でも、味を「あじ」と読むことはない。 一方、塩味が「しおあじ」と読まれるケースもある。醤油味や味噌味と同じように、味付けされた食品(ラーメンなど)の味を意味する場合である。これらが「しょうゆあじ(醤油味)」や「みそあじ(味噌味)」と呼ばれるように、塩味も「しおあじ」と呼ばれている。この種の味には、イチゴ味、抹茶味、カレー味などもある。 色に3原色があるように、味には五基本味がある。常用漢字表に挙げる例としては、基本味での読み方を採用するのが相応しい。 (2020年5月柳本作成)(2021年2月改訂) |