味講座 に戻る 1.いい味の意味 いい味は、「いい(良い)」が味を修飾した用語である。そして、いい味はおいしいことを意味している。この場合、いい味が味の情感的側面を表現していることは明らかである。味の認識的側面はほとんど表現していない。 ただし、味は多義語であるから、たとえば「この番組では、あの俳優がいい味を出している」という表現も可能である。この場合のいい味は、いい趣という意味である。いい味がおいしいことを意味するのは、食品や料理を対象にしている場合である。 2.外国語のいい味 外国にもいい味に相当する言葉がある。①英語はGood taste、②中国語は好味(好味道)、③フランス語はBon goût、④韓国語は좋은 맛(joh-eun mas)そして⑤ドイツ語はGuter geschmackである。 これらの用語も、日本語と同じように、食品・料理を対象とした場合は、おいしいことを意味する。つまり、言語が違っても、これらの用語は味の情感的側面を表現している。補足すると、日本語と同じように、外国語でもこれらの用語はいい趣とかいいセンスなどを意味する場合もある。 以上のことから、いい味が味の情感的側面を表現することは、日本語特有ではなく、世界的にみても普遍性があると理解できる。 3.いい香りといい触感(食感) 一方、香りと触感の場合はどうだろうか。いい香りは花や香水を対象にすることが多く、いい香りだけではおいしいことを意味しない。また、いい触感も指や唇で触れた感じを意味することが多く、いい触感だけではおいしいことを意味しない。いい外観(見栄え)やいい音は、いうまでもない。これらの事実は、五種の官能特性のうち味だけが単独でもおいしさを発揮することを示している。つまり、味の情感的側面がおいしさに他ならないと説明できる。 (2021年7月作成) |