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口内感



1.概要

 口内感は、一般には殆ど知られていない用語で、マニアックな専門用語である。ただし、食品分野では、一部で使用されつつある。問題は、世界の共通語といえる英語の影響力によって、tasteとmouthfeelの関係が味と口内感の関係と同じと理解され、味の理解を損なう要因となっている。。

2.味の理解を損ないそうな口内感
 口内感は、mouthfeelの訳語である。国語辞典や漢和辞典あるいは英和辞典や英英辞典を当たっても、その項目を見付けることはできない。新聞記事サイトで検索しても、ヒットはない。ところが、口内感の原語であるmouthfeelは、国際規格であるISO 5492官能評価分析―用語に項目が採用されている。そこでは、「刺激の物理的あるいは化学的特性に関連した、口腔内における感覚に由来する混合経験」とわかり難い説明がされている。そして、mouthfeelはflavorやtextureとは違うと注書きしている。なお、ISO 5492に掲載された項目の多くは日本のJIS Z8144にも採用されているが、mouthfeelは採用されていない。

 他の資料などを参考にすると、口内感は辛味・渋味あるいはコクなどを指すらしい。やや広い意味では舌触りや喉越しなども含む。

 問題は、小原が著書の「食品の味」で「食品を口にふくんだときの感覚を総称して『味』とよぶならわしである」と書いているように、日本語の味は口腔内の感覚を広く含むことである。だから、辛味や渋味あるいはコクも、一般には味の一部と理解されている。味の意味とtasteの意味には、大きなズレがある。つまり、TasteとMouthfeelは明確に区別されるのに対し、味と口内感は重複する部分が大きい。Tasteとmouthfeelの関係は、味と口内感の関係に当てはまらない。言い換えると、口内感であることは、味であることを否定する根拠とはならないのである。

(2020年9月作成)