味の新世界に戻る

単語表現系慣用味名


1.採用できた単語表現系慣用味名


2.単語表現慣用味名の特徴
 全部で3種しかなかった。とはいえ、単語だけで味名を表すといえるかの方が問題かもしれない。結論からいえば、いえると判断した。味は食品に特化した感覚であり、人は食べないと生きていけない。味の字を伴わないで味を表現することに特化した単語が日常用語として活用されていても不思議ではない。
 採用された単語をみると、形容詞だけでなく名詞も採用されたことは注目される。小カテゴリーが「名詞型」のこくには、関与する味覚受容体が特定されている。CaSR(カルシウム感知受容体)で、体内のカルシウム濃度を維持するためのセンサーである。それが舌の味細胞にも発現していて、こくの発現に関与していることがわかったのだから面白い。
 「形容詞型」は水っぽいと脂っぽいという水と脂に関連する語が採用された。水っぽいとは本来あるべき味が足りないことを表し、脂っこいとは脂の味が強すぎることを表した。ただし、脂っこいは現在では好ましい味の意味にも使われる。

3.判定方法などにおける特記事項
 単語表現系慣用味名では、複数の代表的国語辞典に項目があり、かつその語釈の順位が一番か(語釈数が多い場合にも)二番以内であるという条件も課した。また、こくのようなひらがな二文字の語はヒット件数の検索に適さない。そのために、ヒットした語が該当しているかを一つ一つ確認する必要があった。
 しつこいとくどいの判定には苦慮があった。しつこいとくどいは味を表現する語としての使用頻度は非常に高い。一方で、人の性向を表す語としての使用頻度も非常に高い。両者を比較して、味を表現することに特化した語とはいえないと判定した。

(2025年7月作成)