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慣用匂い名


1.採用できた慣用匂い名


2.慣用匂い名の特徴
 慣用匂い名は112種採用できた。その特徴としては、下に付く語が複数あったことが挙げられる。慣用味名では味が標準であったが、慣用匂い名では標準といえる語は特定できなかった。具体的には、下に付く語が香(り)、臭(い)、におい、匂いの6種あった。これらは等しく標準とみなした。ただし、ニオイ、フレーバー、かおり、薫りなどが下に付く匂い名は、使用頻度が低いために採用できなかった。なお、食品分野では専ら香(り)が使用されている。
香水などで活用されている香調(ノート)の用語はヒット件数が少ないので採用できなかった。香り分野では香水のウエイトが高いことを考慮すると、やや意外である。香調(ノート)は、少なくとも日本では一般の人が使用する用語になっていない。
 慣用味名と比較すると、慣用匂い名の方が採用された数が少なかった。分類された小カテゴリーをみると、「物体名連結型」と「物体名+の型」が慣用匂い名だけにあるのは当然として、「物質名連結型」と「物質名+の型」も慣用匂い名だけなのは、不思議でもある。これ以外の小カテゴリーは案外共通しているが、「オノマトペ型」が慣用匂い名では採用できなかった。
 個別の小カテゴリーを比較すると、慣用匂い名では「食品名+の型」に分類される例が多く、「食品名連結型」は少なかった。また、慣用匂い名では、「形容詞型」も「形容動詞型」と同じ程度採用されていた。
 風味系慣用味名とも比較した。というのは、風味は味覚と嗅覚が統合して知覚という共通の認識があるので、どちらの表現に近いかを確認するためである。「食品名連結型」に比べて「食品名+の型」が圧倒的に多いとか、「形容動詞型」に比べて「形容詞型」も比較的多いなど、慣用匂い名は風味系慣用味名との相違が目立っていた。つまり、風味系慣用は慣用匂い名よりも慣用味名と表現が似ていた。

3.判定方法などにおける特記事項
 「慣用匂い名といえる要件」の要件①では、下に付く語を複数とした。具体的には、香(り)、臭(い)、におい、匂いである。ただし、匂いとにおいは他に比べて意味の違いが小さいので、両方採用できる場合はヒット件数の多い方だけを採用した。
 慣用匂い名の使用頻度を検索するのに用いた二つ目のデータベースは、国会図書館が提供するWARPである。WARPでの判定基準値は5,000件以上とし、複合語の場合は1,000件以上に緩和した。

(2025年10月作成)