1.公表されている慣用色名
慣用色名は、筆者が探索したのではなく、公表資料に掲載されているものである。ここでは、JIS Z 8102:2001「物体色の色名」 にある「慣用色名」に掲載されているものを紹介する。なお、これ以外にも日本語大辞典(講談社)の巻末にも「色名辞典」として紹介されている。

2.慣用色名の特徴
掲載されている慣用色名は全部で269種ある。このうち漢字・ひらがな表記の色名が147種で、残りの122種はカタカナ表記の色名である。カタカナ表記の色名は英語由来の色名といえる。カタカナ表記も併用されていることが慣用色名の第一の特徴である。漢字・ひらがな表記の赤・ばら色とカタカナ表記のレッド・ローズのように重複にみえる例も少なくない。ただし、赤の明度は4でレッドの明度は5である。ばら色の彩度は13でローズの彩度は14である。赤・ばら色とレッド・ローズは微妙に異なっており、重複しているわけではない。この事実は、色も言葉の影響を受けることを示している。
上の表には慣用色名だけを掲載したが、JISの元表では「対応する系統色名」と「代表的な色記号」の欄があって、慣用色名に対応する系統色名が確認できるようになっている。逆にいえば、学術的に系統色名が確立していても、実用的には慣用色名も必要と理解されている。また、色名は有彩色と無彩色に大別され、有彩色配列は「代表的な色記号」の色相・明度・彩度に準じて配列されている。有彩色はとき(鴇)色から赤紫までで、とき(鴇)色を上に円周上に配列することもできる。
慣用色名には赤、緑および青の三原色も含められている。食品一括味だけを対象にして基本味は除外している慣用味名とは対象範囲も異なる。念のために付け加えると、五基本味は全て慣用味名の要件を全て満たす。
言葉として比較すると、「下に色が付く用語」も多いが、基本味修飾味や単語表現味名に相当する例も多い。「下に味が付く用語」を標準としている慣用味名とは様相を異にする。
「形容詞型」「形容動詞詞型」「オノマトペ型」に分類できる慣用色名が見当たらない。深い青とか鮮やかな赤は広く使用されている用語なので、この種の色名は除外されていることになる。これは対応する系統色名を設定できないためであろう。
一方、カタカナ表記の色名には、カラー(色)が「下に付く用語」になっている例が一つもない。これは漢字・ひらがな表記の色名との大きな違いである。それを補うように、レッドやグリーンのような色を表現する語が下になっている例が74種もあってカタカナ表記の色名の6割を超えている。その中で、グリーン(16種)がブルー(15種)やレッド(8種)よりも多いのも特徴的である。これも英語の反映であろう。
(2025年10月作成)