1.採用できた酸味系慣用味名
2.酸味系慣用味名の特徴
採用できたのは全部で3種と少数であった。しかし、二つの小カテゴリーに分類された。酸味系慣用味名は少ないながら多様な表現の味名が活用されている。
小カテゴリー「食品名+の型」に分類された酸味系慣用味名は、トマトの酸味である。甘み系慣用味名でも強い甘みの食品でなく噛むほどに感じられるような甘みの食品が対象になっていた。酸味系でもレモンの酸味でなくトマトの酸味だったのも同じ特徴の食品のためであろう。
後の2種は「形容動詞型」である。このうち、さわやかな酸味の「さわやか」は、甘み系慣用味名や苦み系慣用味名では活用されていないけれども、下記のように物質的根拠のある酸味では採用されていた。酸味と「さわやか」の相性がいいことを示している。ほのかな酸味の「ほのかな」は、甘み系慣用味名のページでも説明したように、3種の基本味系慣用味名全てに共通している。
酸味と塩味はどちらも味覚受容体がイオンチャネル型で他の基本味と異なる。味覚受容体が発現する味細胞の型も他の基本味と異なる。そして、塩味が好まれる味とされるのに対し酸味は忌避される味とされる。にもかかわらず、塩味系慣用味名が一つも採用できなくて、酸味系慣用味名が3種採用された。酸味系慣用味名が採用された理由よりも、塩味系慣用味名が採用されなかった理由の方が興味深い。
甘み系慣用味名や苦み系慣用味名と異なり、酸味系慣用味名では酸味が酸みとはならなかった。甘味や苦味も伝来熟語であるが、読み方はそれぞれ伝来時の「かんみ」と「くみ」から「あまみ」と「にがみ」に変化した。この事実に影響されたと考える。
なお、物質的根拠のある基本味修飾味名としては、さわやかな酸味(クエン酸)、まろやかな酸味(乳酸)および特異な酸味(コハク酸)が採用されている。
3.判定方法などにおける特記事項
特に記載する必要のある事項はない。
(2025年7月作成)