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目的と分析の仕方



〔目 的

 この項では、うま味があるとされている食品を明らかにし、当該食品に感じられている「うま味」が、実際にはどのような味か考察しようとする。

 はじめに、うま味と「うま味」の違いを説明する。うま味とは五基本味の一つで、科学的に確立した味である。ただし、うま味自体は、好ましい味でない。一方、食品中に感じられる旨い味は、うま味ではない。この事実が一般にはほとんど知られていなくて、食品に旨い味を感じると、うま味があるという。知りたいのはこのうま味であるが、このうま味は基本味のうま味とは異なるのだから、区別する必要がある。そこで、うま味と誤解されている旨い味は、鉤括弧を付けて「うま味」と表す。

 なお、この項で説明する内容は、下記の1)で公表している。より詳しくはあるいは正確には、そちらを参照してください。

〔分析の仕方〕
 検索の対象とした食品は、食品群、食材(食品)、料理の3つの区分に分けて選択した。まず、食品群は、「日本食品標準成分表」で採用されている区分を基に検索語とすることに考慮して24群に整理した。食材(食品)はこれまでの検索経験とうま味の検索であることおよび食品群のバランスを考慮して47品目を選択した。料理は代表的と思われる17品を選択した。検索したのは合計88食品(食材・料理)である。

 「うま味」が感じられている食品を検索するために、二つの方法を用いた。一つは、各種データベース(DB)を活用して、そのヒット件数の多い食品を選抜する方法である。もう一つは、官能評価用語でうま味が広く活用されている食品を選択する方法である。

 DBを利用する方法では、読売新聞社が運営するヨミダス歴史館(以下ヨミダス)、アイランド(株)が運営するレシピブログ、クックパッド(株)が運営するクックパッドおよび国立国語研究所が運営するコーバス検索アプリケーション中納言(以下中納言)の4つのDBを用いた。

 食品名を活用した検索では、上記の前3つのDBを用いた。この検索では、検索用語を“食品名のうま味”とした場合のヒット件数の多かった食品を、「うま味」が感じられているとみなした。食品名を必要としない検索では、中納言を用いた。すなわち、この検索では、検索用語を“のうま味”とした結果から、ヒット件数の多かった食品を「うま味」が感じられているとみなした。

 官能評価用語を用いる方法では、公共機関あるいは業界団体での官能評価に使用されている例を重視した。採用している官能評価が多かった食品は、「うま味」が感じられているとみなした。

1) 柳本正勝:うま味と表現される味を呈する食品, 日本味と匂学会誌 第52回大会proceeding集, pp.S73-S76, (2018).

(2020年5月作成)