おいしさの探究に戻る


味の一覧表の概説


味の一覧表は、それを説明したサイトを設けているので、詳しくそちらを参照いただきたいが、以下のページで説明するのに必要な点を概説しておく。

 味の一覧表を作成した目的は、味は五基本味だけという通説からの脱却を図ることにあった。というのは、昔の5味に含まれていた辛味が、現在の五基本味から除外されて無視されていることに違和感があった。また、社会的にはイチゴ味とかおふくろの味あるいは優しい味など多くの味が通用していることに気付いていた。このような事実を個別に指摘を語るだけでは説得力がない。そこで、味の全体像をお示しすることを目的に作成したのが、味の一覧表である。現在は初版で、今後逐次見直す予定である。そして、もう一つの目的として、味の一覧表を作成すれば、「おいしさ」には五感が総合的に係わるという専門家の見解を修正できるのではという期待があった。

 味の一覧表は、3つの大カテゴリーで構成されている。3つの大カテゴリーとは、「単独物質味」「複数物質味」および「食品一括味」である。そして「単独物質味」として15種の味、「複数物質味」として9種の味、そして「食品一括味」として44種の味を挙げている。全体で68種の味である。

 基本味は「単独物質味」にある6つの小カテゴリーの一つ「基本味」に含まれる。辛味は同じ「単独物質味」の小カテゴリー「痛覚性味」に含まれる。この「単独物質味」に含まれる味では、当該味を呈する代表的な物質が定められている。たとえば、代表的な基本味である甘味を呈するのは砂糖であり、辛味を呈するのはカプサイシンである。

 一方、「複数物質味」と「食品一括味」は特定の物質が呈する味ではない。特に「食品一括味」では、どのような物質が関与しているかは全く不明である。ここで大切なことは、これらの味の多くには、香りが関与していることである。ただし、味と香りが別々に機能しているわけではない。味覚情報と嗅覚情報が脳内で統合されると、味と認識されるのである。ここに体性感覚情報が関与することもある。特に「食品一括味」では、このような味が大部分を占めている。

(2020年4月作成)