食味とは「摂取された時、好ましいと感じさせる性質」と定義できる。
食味は、食べ物のおいしさと似たところがある。食味と食べ物のおいしさはどちらも食べ物の性質である。ただし、食べ物のおいしさは個人あるいは集団さらには食事の場により異なるのに対し、食味は万人共通に好ましい食べ物の性質の意味になる。また、食事の場の影響は想定外である。食味は、一般化された食べ物のおいしさといえる。
食味には、味・香り・食感・外観・音の五感が総合的に係わる。逆にいうと、係わるのは五感だけである。おいしさに係わる食べ物の要素でも食品情報は想定外である。また、おいしさに係わる人や食事空間の要素も無視される。
食味はよく使用される熟語であるが、大漢和辞典では項目となっていない。すなわち、伝来熟語でなく和製熟語と推察される。一方、代表的な国語辞典には全てで採用されている。そして、専門用語辞典には食味の項目がない。食味は、一般の人に使用されて、専門家にはあまり使用されない語といえる。食味と同じ意味で、専門家がよく使用する用語は、嗜好性である。ただしどういうわけか、米の品質評価では、専ら食味が使用される。
食味を英語で表記するとpalatabilityである。「JIS Z 8144官能評価分析ー用語」にはおいしさの項があるが、その英語はpalatabilityとなっている。これをおいしさと訳しているが、誤訳である。冒頭の食味は、JIS Z 8144のおいしさの規定でもある。
食味の同義語に嗜好性がある。ただし、次ページで示すように、嗜好性は用語として不自然なところがあるので、美味性と呼ぶことを提案している。すなわち、食味の同義語は美味性と呼びたい。