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おいしさと安心


  おいしさと安心というと、唐突に聞こえるかもしれない。しかし、おいしさと安心は食品による心への効果に係わるという点で共通している。一般に食品の要素には安全・栄養・おいしさの3つがあるといわれるが、栄養が食品による体への効果に係わるのに対し、安全は体への危害からの回避である。

  一方、おいしさが食品による心への効果であるのに対し、安心は心への危害からの回避である。

  「おいしさの意義」の欄において、安全や栄養に比べると、おいしさの重要性が軽視されていると述べた。安心も似たところがある。というより、安心はもっと軽視されている。おいしさは、上述のように食品の要素には含められているが、安心は含められていない。安心も食品の要素の一つであると指摘する人はいない。

  人が心の動物であるという意見には、大部分の人が同意する。ところが食品分野では、人の体すなわち物ばかりが重視され、心は軽視されている。食品による心への効果であるおいしさや安心がもっと重視されてしかるべきである。食料供給が十分な成熟社会になった今日では、おいしさや安心のような食品と心に係わる要素のウエイトが増している。21世紀は心の時代といわれている。

  安心できる食品は一般においしいし、おいしい食品は一般に安心できる。この場合には例外もある。安心できる食品であっても食味が明らかに劣る場合はおいしくないし、おいしい食品であっても安全とか栄養に関するネガティブな情報に接した場合には安心できない。

  一方、安心できない食品は一般においしくないが、おいしくない食品は一般に安心できないとは言えない。たとえば、健康のために食品を摂取する場合は、効果が実感できると多少まずくとも安心している。安全性にこだわる人は安全を確保できていればそれで充実感があるので、多少まずくとも安心している。

  最後に、安心は食品情報の係わり大きいことを指摘しておく、これに対し、おいしさは食品情報の係わりもあるけれども、味・香りなどの官能特性の係わりが大きい。

  別サイトの「安心とは」で安心を説明してあります。

(2014年2月作成)(2020年6月改訂)