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関連した資料の調査



 おいしさの一覧表の更新に資するための資料としては、2種類の資料を収集した。一つは、おいしさの構成要素を提案した資料である。もう一つは、官能評価におけるパネルや評価環境を説明した資料である。収集できた前者の資料は32点、後者の資料は18点であった。

 おいしさの構成要素を提案した資料が32点も収集できたことは、ある意味で驚きである。というのは、おいしさの定義と銘打った定義をした資料は、4点しか見つからないからである。おいしさの構成要素もおいしさの定義も、おいしさを理解する重要な手法と考えるが、この分野の専門家は、おいしさの構成要素からおいしさを理解しようとしている。

 おいしさの構成要素を提案した32点の資料のうち、タイトルが食べ物のおいしさの構成要素となっている例が、15点あった。おいしさの構成要素と題したのは17点である。ただし、タイトルの違いを反映していない例も目立っていた。おいしさの構成要素を提案するような専門家でも、おいしさと食べ物のおいしさの区別が不十分である。なお、構成要素よりも構成要因とした資料の方が多かった。しかしながら、食べ物に係わる要因というのは自然であるが、人に係わる要因というのは不自然なので、構成要素のままとした。

 32点のうち、おいしさを三大要素と捉えた資料は、佐藤1)・今井2)・吉田3)などによる7点にすぎない。この中でも、人に係わる要素を最重要とした資料は見当たらない。おいしさの枠組みで採用できた資料はなかったが、個別の要素は参考にできた。

 官能評価の実験条件を説明した資料は18点であった。実験条件を詳しく説明した資料は、1960〜1970年代に集中し、それ以降は教科書的な資料に限られ、内容も画一的になる。パネルの選定・訓練と評価環境が、それぞれ人に係わる要素と食事空間に係わる要素の参考にできた。

資料
1)佐藤成美:おいしさの科学, 講談社, p.15, 2018.
2)今井悦子:おいしさの要因, 調理学第3版, 畑江敬子・香西みどり(編著), 東京化学同人,
   pp.17-18, 2016.
3)吉田真美:食べ物のおいしさと評価, 食材と調理の科学, 今井悦子(編著), アイ・コーポ
  レーション, pp.129−130,2021.

(2022年11月作成)