おいしさを説明した資料は数多い。しかしながら、定義と銘打って定義した資料はこれまでに4点しかない1~4)。実質的に定義したといえる例を含めても5~11)、11点である。
この11点を整理すると、おいしさを人の感覚や食べ物の性質と捉えられることも少なくない。
人の感情 6点(2点)
人の感覚 3点(1点)
食べ物の性質 2点(1点)
(注:括弧内の数字は、定義と銘打って定義した資料の数である。)
このうち、注目できる定義(または実質的に定義)は、
➀青木宏3)
感覚をベースにし、物象によって触発される感情の一種
②河村洋二郎8)
「おいしさ」とは、口を介して食べ物を消化管に取り入れることによって初めて具体
的に意識する総合的快感だ。
➂吉田真美11)
おいしさとは、食べ物を摂取した時に感じる快感である。
であった、この中では、吉田のものがいちばん的を射ていると考えられる。とはいえ、快感だけがおいしさかという疑問が残る。
資料
1)JIS Z 8144:2004(官能評価分析―用語)
2)柳本正勝:食品をおいしくするための技術開発, バイオサイエンスとバイオインダスト
リー, 54(6), 27-31, 1996.
3)青木宏:おいしさ・好き嫌い・食嗜好, ILSI, No.53, 23-35, 1997
4)角直樹:おいしさの見える化, 幸書房, pp.9-11, 2019.
5)河野友美, 沢野勉, 杉田浩一(編):調理科学事典, 医歯薬出版, p.65, 1975.
6)石倉俊治:食品のおいしさの科学, 南山堂, p.3, 1992.
7)山野善正:“おいしさ”の研究の意義, おいしさの科学, 山野善正・山口静子(編),
朝倉書店, pp.1-3, 1994.
8)河村洋二郎:おいしく食べるために/嚙むこと、味わうこと, ILSI, No.53, 14-22, 1997.
9)五十嵐脩, 小林彰夫, 田村真八郎(編):丸善食品総合辞典, 丸善, p.154, 1998.
10)山口静子:おいしさとは, うま味の文化・UMAMIの科学, 丸善, 山口静子(監), pp.1-34,
1999.
11)吉田真美:食べ物のおいしさと評価, 食材と調理の科学, アイ・ケイ コーポレーション,
今井悦子(編著), p.129, 2012.