提案しているおいしさの定義は「おいしさとは、人が食べ物を摂取した時に起きる好ましい感情である。この感情には、情動・快感・感動も含まれる。」である。
この定義の一文目が指摘しているのは、①人がおいしさを感じること、②対象は食べ物であること、そして➂感情であって感覚でないことである。
二文目の「この感情には、情動・快感・感動も含まれる。」で、一文目を補足している。定義とは本来、用語を関連用語と識別することなので、補足で用語の意味を拡大させるのは一般的でない。しかしながら、この場合はやむを得ない。というのは、おいしさには感情の一語だけでは表せない多様性があるためである。そのために、情動・快感・感動も含まれることを指摘した。この概念を一語で表す言葉はない。そして、この多様性こそが、おいしさの特徴と信じられるのである。なお、多様性よりも多層性の方が適切かもしれない。
実は、以前にもおいしさを定義したことがある。前回の定義は「おいしさとは、人が食べ物を摂取した時に起きる好ましい好ましい感情であり、食事空間も係わる。」であった。もし三文で表すことが許されるならば、後ろに「また、食事空間も係わる。」を加え、「おいしさとは、人が食べ物を摂取した時に起きる好ましい感情である。この感情には、情動・快感・感動も含まれる。また、食事空間も係わる。」としたい。そうすれば、おいしさをより適切に説明できる。とはいえ、これだと定義として長すぎるであろう。