1.ワインで採用された標準味用語
・採用できた標準味用語は31種であった。
・基本味が甘味・酸味・苦味の3種しかないのは、ビールと同じである。
・特有味名に「形容詞+酸味」が5種もあった。なお、このタイプの味名というだけでは味の一覧表には掲載しないこととしている。ただし、爽やかな酸味は、慣用味名の条件を満たしているので、味の一覧表にも採用する必要がある。
・特有味語が14種あった。数は清酒よりも少ないが、標準評価用語全体との比率は、45.1%となって、清酒よりずっと高い。
・全体に長所を指摘する味用語が目立っている。
2.ワインの採集された味用語
・収集した資料は、異なり著者で54点(のべ57点)であった。
・採集できた味用語は、異なりで540種(のべ1,064種)であった。一つの食品で540種もあることは、想像以上であった。また、ワインでは味は基本味だけという風潮が特に強いだけに、意外である。
・代表的資料に掲載されている味用語は24種であった。このうち10種が標準味用語として採用された。
3.ワインの官能評価用語(テイスティング用語)と標準味用語
ワインの重要な官能評価は、どこかで実施されており、一般的な官能評価は、品質評価するというより、決まっている評価を言い当てることが大切のようである。この場合は、味よりも外観と香りが重要であろう。ただし、ワインのおいしさを評価するテイスティングでは、少なくとも日本では味が重要になる。標準味用語は評価用語の初期選択候補になる。
なお、ワインの官能評価の特徴として、愛飲家同士の蘊蓄が盛んなことがある。一般資料の多くは、この目的のための書籍であった。この場合も、特に通を競う場面でなければ、標準味用語を使うと同席者に親切である。
4.味の一覧表からみた標準味用語
味の一覧表に掲載されるのは、リストのうち基本味名、規範味名、慣用味名である。味の一覧表に掲載されている味名は、31種あるワインの標準味用語のうち、9種にすぎない。
特に爽やかな酸味は、慣用味名の条件をみたしているが、味の一覧表にはこれを分類できるカテゴリーがない。味の一覧表の改良への知見となった。
5.調査方法の補足
<調査方法の共通事項は、本欄「取り組みの概要」のページにあります。>
ワインの代表的資料には、「国税庁が用いるに本ワインの標準的英語表現リスト」を活用した。この資料は、官能評価を目的としたものでなく、行政資料である。これは、酒類総合研究所が主催していた「洋酒・果実酒鑑評会」をはじめ、信頼できる評価用語を公表した審査会などが見つからなかったための措置である。
(2022年8月作成)