1.背景
味の分野では、基本味だけが味という誤った通説がある。この通説によれば、原色だけが色ということになり、到底正しいとは考えられない。実際、色にもいろいろな色名があるように、味にもいろいろな味名がある。
一方で、官能評価分野では味用語が評価用語として闊達に活用されている。関係者はこれらの味用語が味であるとは主張しないのであるが、その実態を調査すれば、味とみなすのに相応しい味用語が多数見つかると考えた。
2.対象とした食品
コーヒー、緑茶、ビール、清酒、ワインとした。
食品というより嗜好飲料ばかりとなったが、味用語が広く活用されているのは官能評価においてであり、官能評価を特に活用しているのがこれらの食品のためである。たとえば、固形の食品では、必要な数の資料が収集できそうにない。
3.調査方法の概要
1)資料の探索
国会図書館、東京都立図書館、味の素食の文化センターにおける資料の検索と探索、およびGoogle Scholarによる検索により、公的資料・書籍・解説記事・研究論文などの資料を収集した。
収集できた資料数は、下記の通りであった。
コーヒー: 33点(のべ44点)
緑茶 : 40点(のべ54点)
ビール : 52点(のべ59点)
清酒 : 65点(のべ85点)
ワイン : 54点(のべ57点)、
収集したのはのべ点数の資料であるが、同じ著者・団体の資料は集計前に統合した。
2)代表的資料の選定
収集した資料には目的の叶う程度に優劣がある。しかしながら、それをランク付けすることは困難であった。そこで、資料の中から最も信頼できそうな代表的資料を各1点選定し、この資料に掲載されている味用語には優先権を付与した。
3)活用されている味用語の採集
資料に掲載されている味用語の全てを採集した。ただし、一つの資料からは異なり味用語だけとした。
4)標準味用語の推定方法
代表的資料の味用語は暫定的に標準味用語とみなしたが、その味用語の登場する一般資料が1点以下の味用語は除外した。それ以外の味用語で、掲載されている一般資料が5点以上ある味用語は標準味用語とみなして追加した。
5)標準味用語リストの作成
上で採用できた標準味用語を、基本味名・規範味名・慣用味名・特有味名・特有味語の5カテゴリーに分類したのが、標準味用語リストである。
(2022年8月作成)