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まとめを考察

1.採集された味用語の数
 いちばん多くの味用語が採集されたのはワインで、異なり味用語が540種もあった。いちばん少ない緑茶でも167種あった。これらの食品では、非常に多くの味用語が活用されている。

2.採用された標準味用語の数
 いちばん多くの標準味用語が採用されたのは清酒で、実に58種もあった。食品全体でもいちばん多いであろう。いちばん少ない緑茶でも20種あった。

3.5食品全てで採用された標準味用語
 甘味、酸味、苦味、渋味、香味、後味、コク、バランスの8種であった。バランスを除く、7種は「味の一覧表」で採用している。これらは、この調査からも味であることが支持された。
個々の標準味用語リストでは数多く採用された特有味名と特定味語では、特定味名は一つもなく、特定味語もバランスだけであった。特定味名や特定味語には、文字通り各食品特有の味名・味語が多いことになる。
 香味が採用採用されているのは、風味が採用されなかったこととの関連で注目される。各種データベースで調べると、風味の方が圧倒的に使用頻度が高い。資料の著者は専門家であることためと考えられる。なお、風味が採用されなかったのは緑茶である。

4.味の一覧表の改良への知見
 ワインの特有味名にあった爽やかな酸味は、慣用味名の要件を満たしている。ところが、この味名は、味の一覧表に分類できるカテゴリーが準備されていない。また、新しく立てるには納まりが悪い。また、基本味名や規範味名でもない。したがって、「味の一覧表」には爽やかな味を分類できるカテゴリーは準備されていない。「味の一覧表」を改良する知見となった。

5.特有味語の役割
 特有味語は、日常用語をそのまま使用できる点および表現に制約がない点で、官能評価用語として便利である。また、欧米では基本味にも「味」を付けない風潮にあるために、海外の評価用語を活用しようとすれば、特有味語になり勝ちである。特に個人とか小グループの場合に適している。
 しかしながら、一般の人に理解されないだけでなく、関連食品の特有味語とは全く異なっているとか、同じ用語に異なる意味を持たせることになる。使用範囲が限られることに留意する必要がある。

6.味とみなせる味名
 本調査の目的であった、味とみなせる味名である。規範味名や慣用味名で、標準味用語リストに採用された味名は、味であることが支持されたといえる。問題は、特有味名である。特有味名は慣用味名の要件を満たさないけれども、少なくとも当該分野では味とみなせるようにみえる。味の一覧表での見解では味とみなせないのであるが、逆にその理由を整理する必要がある。従来は、基本味と並べても味と呼べるという視点取り組んできたので、慣用味名の要件が厳しすぎるのかもしれない。これまでの視点とは、逆の視点での問い掛けが必要である。少なくとも、ワインの標準味用語に採用された爽やかな酸味は、慣用味名の要件を満たすので、味とみなす必要がある。

(2022年8月作成)