1.課題の背景
味は食品のおいしさにおいて最も重要な要素である。にもかかわらず、あまり重視されていない。その背景には、味は五基本味だけという誤った通説があると考えている。
この現状を改善する目的で、味の一覧表を作成した。この一覧表では、慣用味名が多数を占めている。慣用味名も味であると指摘しているが、必ずしも受け入れられていない。そこで、慣用味名が外国語にも存在することを明らかにすることによって、慣用味名が日本だけでなく、世界に共通する概念であることを明らかにしたい。
2.対象とした外国語
英語・中国語・フランス語・韓国語・ドイツ語の5言語を対象にした。なお、英語はアメリカ英語とイギリス英語を別々に探索している。
3.今回の探索の範囲
日本語での慣用味名の概念が当てはまる外国語を探索した。このために、日本語の慣用味名の要件を準用した。外国語には外国語特有の慣用味名の概念が存在する可能性もあるが、これは考慮しなかった。
また、慣用味名の存在を明らかにすることを一義的な目的としたので、各言語に存在する慣用味名を網羅することは目標としなかった。網羅することは、母国語とする研究者によらないと不可能である。
4.調査方法の概要
1)候補用語の収集
@日本語および先行して探索した外国語で採用できた慣用味名の訳語(英語→中国語・韓国語→フランス語・ドイツ語の順に取り組んだ)
A各種書籍、雑誌記事、ホームページ、辞書などからの収集
BGoogle翻訳(食品名・料理名および形容語を対象)を活用して作成
Cコーパスデータベースの活用(英語のみ)
2)「定型的な表現といえる」の判定
候補用語を慣用味名とみなす4要件のうち、「定型的な表現といえる」が検討の主な作業となる。この要件の指標として、各国の新聞系データベースとレシピ系デーダベースのヒット件数とした。要件を満たすかは、両方のヒット件数が別途設定した判定基準値を上回るかで判定した。
3)慣用味名としての採否
「定型的な表現といえる」の要件を満たした候補用語を「官能特性の味を意味している」と「味の特徴を表現している」を満たすかを確認し、満たした候補用語は慣用味名とみなした。なお、もう一つの要件である「味が下に付く用語である」は、候補用語の収集段階で満たしている。
(2022年8月作成)