ドイツ語に存在する慣用味名
1.表の見方
表頭は、慣用味名のカテゴリー名である。ただし、具体的なカテゴリー名は「食品名型」だけで、それ以外は「その他」としてまとめている。それぞれのカテゴリー名の欄に該当する慣用味名を並べている。なお、ドイツ語では、表は一つである。つまり、慣用味名はGeschmackが下に付く用語である。
2.ドイツ語にある慣用味名の概要
- 1)ドイツ語で採用できた慣用味名は6種だけであった。外国語の中でもいちばん数は少ないが、ドイツ語にも慣用味名が存在することは明らかである。
2)ドイツ語で採用できた慣用味名は、複合語ばかりであった。これはドイツ語の言語特性を反映したものといえる。
3)「その他」に比べて「食品名型」の慣用味名が比較的多かった。このバランスはフランス語の場合と反対である。
4)「その他」が少なかった理由の一つに、いい味・おいしい味の類い(例:Guter geschmack)が採用できなかったことがある。
5)ドイツ語で採用できた慣用味名の数がいちばん少なかったのは、味を名詞や形容詞の単語で表現することが多く、geschmackを付けた用語で表現する習慣がないためと推察している。欧米の言語は全体にその傾向を示すが、ドイツ語は特に顕著である。
3.日本語慣用味名との比較
ビールの味以外の5種の慣用味名は、日本語にも存在する。ビールの味もビール業界では広く使用されている特有味名であることを確認しており、一致度は非常に高いといえる。
ドイツ語で慣用味名が少なかった最大の理由は、味名にgeschmackを付けない言語特性であろう。五基本味をドイツ語表記した用語は、新聞系サイトもレシピ系サイトのどちらのヒット件数も、下に示した判定基準値に達しない。
4.調査方法の補足
- 1)候補用語探索段階
収集できた候補用語は、669種であった。
2)「定型的な表現といえる」の判定段階
「定型的な表現といえる」の指標としては、新聞系サイトとしてはProQest Central(新聞・ドイツ語)のヒット件数、レシピ系サイトとしてはChefkochのヒット件数とした。ProQuest
Centralは国会図書館が導入しているProQest社のデータベースである。これは12の新聞系DBで成り立っている。
判定基準値は、一般的な候補用語(分かち書き)では、新聞系DBが100件以上、レシピ系DBは50件以上としたが、この条件を満たした候補用語はなかった。一方、複合語の場合は、新聞系DBが30件以上、レシピ系DBは20件以上とした。
(2022年8月作成)