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フランス語に存在する慣用味名


フランス語に存在する慣用味名


1.表の見方
 
表頭は、慣用味名のカテゴリー名である。ただし、具体的なカテゴリー名は「食品名型」だけで、それ以外は「その他」としてまとめている。それぞれのカテゴリー名の下に該当する慣用味名を並べている。
フランス語では、表は一つである。つまり、慣用味名はgoût が下に付く用語である。Saveurが下に付く慣用味名は、採用できなかった。

2.フランス語にある慣用味名の概要

  • 1)フランス語で採用できた慣用味名は11種あった。案外少なかったが、フランス語にも慣用味名が存在することは明らかである。
    2)フランス語には、日本語の味に対応する言葉としてgoûtとsaveurがある。ただし、上述のように、saveurタイプの慣用味名は採用できなかった。
    3)「食品名型」で採用できた慣用味名は2種だけであった。そして、「その他」は9種あった。このバランスは、ドイツ語とは逆である。一方、中国語と同じ傾向である。
    4)ドイツ語ではビールの味が採用されていたのに対し、フランス語ではワインの味が採用できたことは、両国のイメージに合致している。

3.日本語慣用味名との比較
 フランス語では、「食品名型」の慣用味名が2種しかなく、しかも日本語の慣用味名と一致しない。日本人はフランス料理を見本としてきたように思えるが、両国の食材・料理法の違いは依然大きいのであろう。一方、「その他」では近いのを含めると、採用された9種のうち7種が一致していた。
 フランス語で採用できた慣用味名の数が少ないのは、味を名詞や形容詞の単語で表現することが多く、goût を下に付けた用語で表現する習慣がないためと推察している。特に新聞系サイトでその傾向が強い。
 日本語に慣用味名が多いのは、日本料理のおいしさを説明するためと考えていたが、代表的な美食の国であるフランス語には慣用味名が少なかったことを勘案すると、単純にはいえないらしい。

4.調査方法の補足

  • 1)候補用語探索段階
     採集できた候補用語は、889種であった。
    2)「定型的な表現といえる」の判定段階
     「定型的な表現といえる」の指標としては、新聞系サイトとしてはLe Mondeのヒット件数、レシピ系サイトとしてはCuisine azのヒット件数とした。Le Mondeは国会図書館が導入しているLexis Advanceに含まれるものである。判定基準値は、両方のヒット件数が50以上とした。
    3)採否の判定段階
     新聞系DBのヒット件数が少ないために採用できなかった候補用語に、goût du chocolat、goût de citron、Goût du fromageなどがあった。また、レシピ系サイトのヒット件数は十分であるが、新聞系サイトのヒット件数が少ないために、慣用味名に採用できなかった候補用語が数多くあった。


(2022年8月作成)