Tasteタイプ
Flavorタイプ
1.表の見方
表は、tasteタイプとflavorタイプの二つある。tasteタイプの表では、2つの慣用味名を「食品名型」と「形容詞化食品名型」のカテゴリーに分けている。Flavorタイプの表では、「食品名型」と「形容詞化食品名型」および「形容詞型」の3つのカテゴリーに分けて慣用味名を並べた。
なお、英語ではアメリカ英語とイギリス英語を別々に探索したが、これらの表は、アメリカ英語のものである。
2.英語にある慣用味名の概要
- 1)アメリカ英語で採用できた慣用味名は29種あった。英語にも慣用味名が存在することは明らかである。
2)英語の味には、tasteタイプは2種だけで、flavorタイプは27種あった。しかも、tasteタイプで採用できた2種は、同じ表現がflavorタイプでも採用された。
3)Tasteタイプの慣用味名がflavorタイプと共通していたことには、戸惑いがある。Flavorには味覚とともに嗅覚が関与し、tasteは味覚だけが関与すると信じられているからである。Tasteとflavorの関係は、一般にいわれているほど単純でないことを示している。
4)Flavorタイプは、「食品名型」、「形容詞化食品名型」、「形容詞型」の三つのカテゴリーに分類できた。それぞれ、11種、6種、10種あった。この「形容詞化食品名型」は、日本語版には存在しないカテゴリーである。なお、カテゴリー名を具体的に表示できたのは、英語だけであった。他の外国語では「その他」を活用している。
5)イギリス英語には、tasteタイプは採用できず、flavourタイプが21種採用できた。その多くは、アメリカ英語のflavorタイプと重複しており、イギリス英語独自の慣用味名は、extra
flavourのみであった。
3.日本語慣用味名との比較
英語の慣用味名は、日本語の味が英語ではtasteとflavorの二つの語に対応することが複雑にしている。しかも、日本ではflavorが風味あるいはフレーバーと訳され、風味は味ではない、フレーバーは香りであると主張される。この問題は、別サイトの「風味」でも考察している。
日本語の慣用味名と同じまたはほぼ同じ英語の慣用味名は、「食品名型」で11種中9種もあった。一方、「形容詞型」では10種中2種であった。食習慣の違いを考慮すると食品名型の一致率が高いのは意外である。一方、形容詞型の一致率が低いのは、国民性と言語特性が異なるためと説明できる。
英語の「形容詞型」の慣用味名と日本語の「形容詞型」(および「形容動詞型」)を比較すると、英語では強調的表現が多く、日本語では控えめな表現が多い。
英語のカテゴリー名にある「形容詞化食品名型」は、日本語版の慣用味名には該当するカテゴリーが存在しない。たとえばnutty flavorは、直訳すると「ナッツようの味」あるいは「ナッツのような味」であるが、このような表現は日本語では稀れであり、「ナッツの味」とか「ナッツ味」と表現するためであろう。
英語の慣用味名にfresh flavorが含まれる。日本語の慣用味名には新鮮な味は含まれていない。食に対する日本人の特徴の一つは、新鮮さへのこだわりと信じているが、この信念とは異なる結果にみえる。
4.調査方法の補足
- 1)候補用語探索段階
英語では候補用語の探索で、コーパスデータベースが活用できた。アメリカ英語ではCorpus of Contemporary American
English (COCA)を、イギリス英語ではBritish National Corpus (BNC)を使用した。
アメリカ英語で収集できた候補用語は569種であった。
2)「定型的な表現といえる」の判定段階
「定型的な表現といえる」の指標としては、アメリカ英語では新聞系サイトとしてはNew York Timesのヒット件数、レシピ系サイトとしてはfoodgawkerのヒット件数とした。イギリス英語としては、それぞれThe
Timesとallrecipesを使用した。新聞系データベースはは、国会図書館が導入しているProQest社のProQest Centralに含まれているものを使用した。
判定基準は、アメリカ英語では「食品名型」だけは両方のヒット件数が30以上とし、それ以外では100以上とした。イギリス英語ではそれぞれ20以上と50以上に読み換えた。
3)採否の判定段階
Good tasteは、日本語に直訳すると「いい味」である。日本語の「いい味」は慣用味名に含まれているが、英語では「いいセンス」の意味なので、採用しなかった。
(2022年8月作成)