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中国語に存在する慣用味名


味タイプ


味道タイプ


1.表の見方
 
表は、味(wèi)タイプと味道(wèidao)タイプの二つある。どちらも慣用味名のカテゴリーは、「食品名型」だけは独立させて、それ以外は「その他」にまとめている。各カテゴリー名の欄に、そこに含まれる慣用味名を並べている。

2.中国語にある慣用味名の概要

  • 1)中国語で採用できた慣用味名は21種あった。中国語にも慣用味名が存在することは明らかである。ただし、英語より少ないのは意外であった。
    2)中国語には、味タイプとともに味道タイプがある。味タイプは14種で、味道タイプは7種あった。味と味道の違いは、英語のtasteとflavorほどの違いはなく、日本語の味と味わいに近い。
    3)味タイプは、「食品名型」が5種あったが、味道タイプは1種のみであった。どちらにしても「食品名型」の慣用味名は少なかった。これは、フランス語と同じ傾向である。
    4)味タイプでは、採用できた慣用味名の全てが二字の用語であった。三字以上の用語が採用できない理由は、膨大な数の漢字を活用する中国語に影響されているのであろう。
    5)味道タイプのうち上に二字以上が付いた3つの慣用味名は、郷里・家族への愛着を表現したものもであった。これは中国人の国民性の一面であろう。

3.日本語慣用味名との比較
 味タイプと味道タイプの両方合わせた「食品名型」の慣用味名7種のうち、日本語と共通するのは4種であり、「その他」の15種のうち日本語と共通するのは12種   であった。「その他」の一致率が高い反面、「食品名型」は案外低かった。 
 味タイプと味道タイプに分けたが、味と味道は、日本語の味と味わいに近い。日本語では、味わいが下に付く用語を慣用味名の候補用語とはしなかったので、慣用味名には味わいが下に付く用語は含まれていない。この措置が妥当なのか、改めて検討する必要がある。
 日本語の慣用味名の「伝来熟語型」はいうまでもなく、中国から伝来した味名である。日本語の慣用味名には「伝来熟語型」のカテゴリーに22種も含まれている。一方、中国語では3種しか採用されていない。
味道タイプのうち、上に二字以上の語が付いた3つの慣用味名は、いずれも日本語の慣用味名に該当するものがある。郷里・家族への愛着は、共有しているらしい。
 鮮味はうま味とされることもあるが、基本味のうま味のはずがない。旨い味に近い用語とみなして採用した。

4.調査方法の補足

  • 1)候補用語探索段階
     収集できた候補用語は、849種であった。
    2)「定型的な表現といえる」の判定段階
     「定型的な表現といえる」の指標としては、新聞系サイトとしては人民日報あるいは中国重要新聞デ-タベースのヒット件数、レシピ系サイトとしては美食天下のヒット件数とした。中国重要新聞データベースも併用したのは、人民日報は中国の主要新聞であるが、この目的には必ずしも適切でない可能性を勘案したためである。人民日報は国会図書館が導入しているものを、中国重要新聞データベースは国会図書館が導入してる中国学術情報データベースに含まれているものを「報紙」を選択して使用した。
    判定基準値は、両方のデータベースのヒット件数が50以上とした。ただし、中国重要新聞は300以上とした。
    3)採否の判定段階
     味タイプと味道タイプで共通するものが3種あった。共通した場合は、中国重要新聞のヒット件数の多い方を採用した。結果として味道が下に付く慣用味名が採用され、菜味、好味、家味は保留とした。

(2022年8月作成)