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アルカリ味

アルカリ味とは「炭酸カリウムや水酸化ナトリウムが呈する味」である。アク抜きが不十分なこんにゃくなどで感じるとされるが、国際規格のISO 5492(官能検査用語)によれば、pH7,0以上で感じられる味と規定している。アルカリ味が好ましいとされるケースは知られていない。

 国語辞典にアルカリ味の項目はない。総合調理科学事典にはあるが、「・・・物理的な刺激によるもので、渋味、えぐ味、辛味などに近い。」とやや不可思議な説明となっている。

 このように、アルカリ味は味に繊細なはずの日本人に馴染みがなく、欧米人が感じているという不思議な味である。日本では、Googleで“アルカリ味”で検索しても、受け付けられない。“アルカリ性”の間違いとして、検索結果が表示されるほどである。また、日本のJISS Z 8144でもアルカリ味を項目として採用しているが、その解説で「日常生活でアルカリ味を実際に感じることはほとんどない」と説明していた。

 一方、欧米人の少なくとも一部には感じられている。たとえばISO 5492(官能検査用語)の旧版では、基本味とされていたほどである。最新版でも基本味である可能性をわざわざ注書きしている。イギリスのBS 5098は、現在でも基本味にアルカリ味と金属味を含めている。

 欧米人には認識されていても、受容体の発現が立証されていないので、アルカリ味を基本味とみなすことはできない。だからといって、味であることを否定するのは適切でない。欧米の専門家がいうことは一般に合理的である。そこで、味覚性味であるという根拠は何もないのであるが、暫定的に味覚性味とみなした。味の一覧表では、中カテゴリー「味覚性味」の小カテゴリー「受容体未確認味」に分類している。

 アルカリ味の受容体は、現在に至るまで報告されていない。現在の味覚生理学の水準から判断すると、アルカリ味の受容体はないと推認できる。問題は、どういう仕組みでアルカリ味が感じられているのかを説明できない。それができないかぎり、アルカリ味の受容体はないと断言することには躊躇がある。

(2019年12月作成)