冷味とは「メントールやミント類が呈する温度覚性味」であるが、「低温の食品が呈する感覚」も冷味と呼ばれている。国際規格のISO 5492(官能評価用語)では、前者をchemical
cooling(化学減温)と呼んで、味とはみなしていない。
メントールの受容器は、自由神経終末かルフィニ小体であるが、どちらかはわからない。その受容体は、温度受容体であるTRPM8(25〜28℃以下)とされている。TRPM8は、9つある温度受容体の下から2番目に低い温度の受容体で、冷刺激受容体と呼ばれることもある。温度覚は、温覚と冷覚に分けられる場合も多いが、この区分によると、冷味は冷覚性味になる。メントールは温度受容体に受容されるためにひんやりする。メントールが低温のためではない。
メントールなどによる冷味と紛らわしい感覚に、冷水や低温食品による刺激がある。これも冷味と呼ばれることがある。実は、使用例はこちらの方が多い。冷水で冷味が感じられているとすれば、物体による刺激が味とみなされる唯一の例になる。ただし、この感覚を味といえるかは、今後検討する必要がある。
冷味に関連して、熱味や温味は認識されていない。料理は一般に熱い方がおいしいとされ、「アツアツ」とか「あっちっち」というとおいしそうに聞こえる。にも関わらず、熱味などの語の使用例を探すことは難しい。この事実は、熱いお茶や温め料理が味と感じられていないことを示している。この事実から推察すれば、上で述べた冷水による刺激も、味と認識されていない可能性が高い。
(2019年12月作成)