イチゴ味とは「イチゴで味付けられた食品が呈する特有の味」と説明できる。イチゴ味は、イチゴ自体の味を意味することもあるが、多くの場合はイチゴで味付けされた(別の)食品の味を意味する。イチゴ自体の味を意味する場合は、イチゴの味と呼ぶ。イチゴにより味付けられる代表的な食品は、クッキーとかアイスクリームである。
イチゴ味は、慣用味名の一つである。したがって、用語として定着していることに根拠を求めており、自然科学的知見に基づく根拠ではない。
イチゴ味は、「味の一覧表」で、大カテゴリー「食品一括味」/中カテゴリー「個別食品味」/小カテゴリー「食品名連結型」に分類している。イチゴ味が食品を一括して評価された味であり、イチゴで味の特徴を表現していることを示している。他の小カテゴリーの味に比べると、「食品名連結型」の味は、味であることを疑う意見が少ない。この小カテゴリー名が示すように、イチゴという食品名が味を形容しているので、意味が具体的なためであろう。
慣用味名の味に関与する感覚は、主として味覚と嗅覚であるが、イチゴ味の場合、表在感覚や色覚も影響すると推定できる。イチゴ味は、味の認識の過程において記憶との照合を経るはずなので、マルチモーダル認知(多感覚認知)の味である。
イチゴ味の特徴の一つは、イチゴによる味付けを情報として与えられることが多いことである。イチゴ味の食品の包装紙には、しばしば「イチゴ味」の文字が目立つように印刷されている。消費者はこの情報を、好みの味を選ぶのに用いる。
イチゴ味の存在は、味付けが調味料だけでなく食材も使用されていることを示している。食材で味付けられる食品は一般に味の薄い食品であるが、ラーメンのように味の濃い食品のこともある。この場合は、味付けというよりも、味の特徴付けといえる。
レモン味では、レモン風味も広く使用されている。しかし、イチゴ味に対応するイチゴ風味は、あまり使用されない。
古い時代にも、イチゴ味と似た表現の味名があった。肉味や魚味である。同じ表現といわずに似た表現というのは、イチゴ味の味は「あじ」と訓読みするのに対し、肉味などの味は「み」と音読みするからである。また、イチゴ味が上述のようにイチゴで味付けられたクッキーなどの味であるのに対し、肉味は肉自体の味である。この違いは、肉味と魚味は中国から伝来した熟語であり、イチゴ味は近年登場した和語という歴史的背景がある。肉味や魚味が減少傾向ながらも使用され続けている一方で、イチゴ味という似て否なる用語の普及を許したといえる。
イチゴ味のような、小カテゴリー「食品名連結型」の味が近年急速に増加している。この小カテゴリーには51種もの味が含まれている。小カテゴリーの中ではいちばん多い。そして、プリン味のように、21世紀になってからしか使用例が確認できない味もある。これは、いろいろな味を楽しむ風潮が背景にあると推察している。
(2019年12月作成)(2021年7月更新)