あっさり味は「舌を中心とした口腔への刺激をあっさりと表現できる食品の味」と説明できる。あっさり味は淡泊系で、味が微妙に感じられる難のない味である。
あっさり味は、食品を一括して評価した味であり、関与する物質は多数あって特定できない。あっさり味が存在する根拠は、用語として定着していることに求めている。
こってり味とあっさり味は対義語である。こってり味の対義語としてさっぱり味やすっきり味が使用されることはほとんどない。また、後味がすっきりしているとはいうが、後味があっさりしているとはいわない。あっさり味とさっぱり味やすっきり味とは、どれも淡泊系で似ているが、微妙には区別されている。
あっさり味と同じ意味の用語に、あっさりした味とあっさりとした味がある。これらの用語も広く使用されている。これらの用語間の意味や用法の違いは指摘できない。国語研究所が運営している「中納言」によれば、あっさり味だけが複合語(語彙素)である。あっさり味は、語彙素化が進行したといえる。このために、味の一覧表では、これらの味をあっさり味で代表させて、残りの2用語は保留にしている。
付け加えると、あっさり味わいとはいわないが、あっさりした味わいとかあっさりとした味わいの使用は、あっさりした味やあっさりとした味よりもむしろ多い。
食品分野におけるオノマトペ表現は、食感(テクスチャー)に多いことが知られている。ただし、味を形容するオノマトペは、語の数は少ないが、使用頻度はむしろ高い。味の形容に使用されるオノマトペは、大辞林の語形分類による一回語形の14「AっBり型」に集中している。
あっさりはオノマトペなので、品詞としては副詞である。日本語では副詞が名詞を形容することもあるけれども、他の副詞が味を形容した用語の例は見当たらない。言い換えると、味を形容する副詞は、オノマトペだけである。
あっさりは、専ら味の特徴を表現する語ではない。たとえば、大辞泉によれば「@人の性質や事物の状態などがしつこくないさま。複雑でないさま。さっぱり。A時間や手間をかけずに物事が行われるさま。簡単に。手軽に。」と語釈している。@の意味が味の特徴を表現する語に意味拡張したといえる。
あっさり味の確認できる初見は1982年で、婦人倶楽部に掲載された記事である。野菜のグラタンを紹介したグラビアの見出しに登場した。「オノマトペ型」の四つの味の中ではいちばん古いが、中カテゴリー「形容表現味」の他の小カテゴリーに比べると、やや遅い。
(2019年12月作成)